It's a wonderful world



空がゆっくりと白み始めていく。

その微かな光が、まるで神様が天から突き立てたように立ち尽くす巨大な空中要塞を照らしだした。
イヴァリースの、人類の未来を変えるという象徴だったそれは、今となってはただの巨大な鉄の塊でしかない。


私はそっと、視線を落とした。
戦いを終え、私の膝に頭をあずけたまま眠る彼を見つめる。
汗でその額に張り付いたままの髪を指ですくい、血やほこりで滲んだ顔をそっと拭った。
その表情は、長く苦しかった日々から解放され、これまで見たこともないほど穏やかだ。


これですべてが終わったのだと、そうは思わない。
私たちは、これからの未来を確かに一歩ずつ前へ進んでいかなくてはいけない。

哀しみに包まれて、立ち止まって、過去に思いを馳せる時もあるだろう。
心が痛くてどうしようもなくて、涙が溢れる時もあるだろう。


けれど。

どんなに深く傷ついても、その傷がたとえ消えることはなくても、きっといつかその傷が癒える時は来る。
涙がかれるほど泣いて、泣き疲れたその顔にも、笑顔が戻る時は来る。

それでも必ず、明日はやってくる。



「あなたが望んだ未来がきっとくるわ」


その頬に手を添えて、祈るように口にした。



砂漠の向こうの地平線から陽の光が顔を見せ始める。
その光はゆっくりとこの空を、この大地を、この世界を照らしていく。


ほら、今日も世界は輝いている。