ふと目を覚ませば、隣にあったはずの温もりがそこにはない。
慌てて顔を起こせば、「起きたか?」と足元のほうから声が届いた。

「バルフレア、何してるの……?」

その声の主に問いかければ、素肌にガウンをまとったまま「ん?」とこちらを向いた。

「愛しい恋人のために、コーヒーを淹れてるところさ」

カップとポットを持ち上げ、相変わらず涼しい笑みでそうバルフレアは告げた。



「ありがと……」

淹れたてのコーヒーを受け取って口に含めば、じんわりと熱が喉を通り過ぎていく。
もちろん、バルフレアの飲むブラックとは違い、私好みの甘さにちゃんとしてある。

「温まったか?」

ベッドに腰掛け、ヘーゼルグリーンの瞳でそう問いかけられる。

「うん。美味しい」
「そうか。だが、こっちの方がもっと温まるかもな」

バルフレアは嬉しそうににやりと笑った後、私のカップを取り上げてベッドサイドにそれを置いた。

「バ、バル……?!」

いとも簡単にシーツの中へもぐりこんできたバルフレアに驚いている隙に、
私はあっという間に彼に組み敷かれてしまった。

「ちょっと、皆もう起きてるんじゃない!?」
「大丈夫だ、気にするな」


そう言って、口づけを落とされればもう抗えるはずもなく、
私はわざと困ったようにため息をついてから、バルフレアの体温にそっと身を委ねた。