Tea for two



「あら、随分と男前な顔になってるじゃない」

待ち合せ場所だった白波亭のテラスに座っていた相棒は、俺の顔を見て開口一番そう言った。

「まさかあんなヒステリックな女だったとは思わなかったぜ」
「あら、そうさせるだけのことをあなたがしてしまったんじゃなくて?」

見事に赤くなった頬をさすりながらそう言えば、彼女はくすりと笑った。

以前何度か寝た女に偶然再会したまでは良かったが、会うなり女は「最低」と見事な平手打ちを俺にお見舞いした。
お互い遊びだと、そう思っていたのは俺だけだったらしい。

「飛空挺の扱いは一人前だけど、女の子の扱い方はまだまだのようね」

さらりと言われたその言葉に反論しようと口を開いたが、俺は結局何も言わないままため息をついた。

まだコンビを組んで間もないこの相棒に、俺は全く持って頭が上がらない。
知識も戦闘力も、悔しいが俺を軽く上回っているし、こいつが言うことすべてが的を射ていて反論する余地さえない。
だが不思議と、それを不快に感じることは全くなかった。

彼女が持つ強さやしなやかさは、ヴィエラという種族特有のものなのか、
それとも、俺なんかよりも遥かに長くこの世界で重ねてきた時間によるものなのだろうか。

まだこいつに関しては掴みきれないところが多くありすぎる。
それでも、共に過ごす時間は苦痛ではないし、むしろ心地いいと感じるほどだ。
きっと自分が目指す最高の空賊というものを、この相棒となら実現できるような妙な自信が俺にはあるのは確かだ。

「あなたは何か飲まないの?」

自分の前に運ばれてきたティーカップを眺めながら、彼女は俺に尋ねた。

相棒のことで最近知ったことがひとつある。
普段は強い酒ばかり飲むくせに、なぜか紅茶だけは甘いものが好みらしい。
今も、その良く手入れされた長い爪で器用に角砂糖をふたつカップに入れた。

「……なぁに?」

俺の視線に気づいた彼女が訝しげに俺を見る。

「いや、なんでもないさ」

俺はさっきの彼女と同じようにくすりと笑って、店員に彼女と同じものを注文した。
そんな俺を見て、相棒は穏やかに微笑んだのが見えた。


「さあ、次の獲物はどうする?フラン」