雨よ止まないで





この人は本当に私のことが好きなんだろうか。

最近、いつもそんなことを考えてしまう。

無口なあなたがやっと口を開いたかと思えば、出てくるのは『ダルマスカ』『ラミナス国王』、果ては『アーシェ殿下』ばかり。
そんなに気になるのなら、アーシェ様と結婚でもしちゃえばいいじゃないと思うけれど、
きっと怒られそうだし、こっちが悔しくなるから絶対言わない。


けれど今日は、このラバナスタに年に数度あるかないかの雨が降りそそいでいる。
砂漠の砂はしっとりと濡れ、街もなんだかいつもと違う様子だ。

こんな日は、さすがのダルマスカ軍もじっと大人しくしているらしく、珍しくウォースラは朝からずっと私の部屋にいる。

「雨だろうがなんだろうが、稽古をつけるのには関係がないのだがな」
「あら。たまには身体を休めなさい、っていう神様のお告げかもしれないわ」
「ずっと家の中にいては、身体がなまって仕方ない」

そう言ったあなたに、「その家の中で昨夜は散々無茶したくせに」と言えば、少し顔を赤らめて「ばかやろう」と怒鳴られた。


その姿に笑みがこぼれるのも、怒ったあなたがお返しとばかりに私の唇に噛み付くのも、
全部雨のおかげかもしれないと、あなたの背中に手を回しながらそう思った。  




title from 『確かに恋だった』より「雨降りに恋10題」