君を待つ雨の午後



突然の雨に慌てて窓を閉めようと窓枠に手を掛けた時、見慣れた飛空艇が目に入った。

それはまるで私に挨拶をするように大きく上空を旋回すると、東部にある飛空艇ターミナルの方向に飛んでいく。

その姿を見送ってから窓を閉め、キッチンへと向かった。

朝からずっと火に掛けて煮込んでいる特製のシチュー。これはバルフレアの大好物だ。
バルフレアがここへやって来るたび、私はこれをこしらえて彼を迎える。

「いつも同じもので飽きないの?」と聞いたら、「これを食べると帰ってきたなって、そう実感できるんだよ」と
美味しそうに口に運びながらそう言った。

「もちろん、おまえの顔を見るのがいちばんだけどな」

ちゃんと私へのフォローも忘れないところが、女の子にもてる要因なのだと思う。


地上にいるよりも空にいることの方が多くて、いつも風のようにやって来て、去っていくバルフレア。

でも、ここがあなたの羽根を休めることが出来る場所になっているのならば、少しくらいの寂しさは我慢してあげる。


今頃、ターミナルにシュトラールを停めて、ノノにメンテナンスの指示を出して、
フランにからかわれながらここへ向かっているのかな。


ちゃんとここで待ってるから。―――だから、早く逢いに来て。




title from 『確かに恋だった』より「雨降りに恋10題」