恋の蕾



「ねえ、フランとバルフレアって恋人同士なの?」

ずっと気になって仕方のなかった疑問を投げかけると、フランはほんの少しだけ目を丸くした(ような気がした)けれど、すぐにいつものように小さく穏やかに微笑んで私を見つめた。

「なぜそう思うの?」
「だって、私たちに会うよりもずっと前から一緒にいるんでしょう?」

そう言うと、フランは「そうね」と、その細く長い指を頬にあてた。

「でも、私とバルフレアは恋人とは違うわ」
「そうなの?」
「ええ。私たちは恋人同士よりももっと深いところでつながっているの」

その意味がわからなくて、首をかしげるとフランは私の頭をそっと撫でた。

「パンネロは、恋ってどんなものだと思っているの?」
「うん……まだよくわからないけれど、その人と一緒にいるとドキドキして胸が苦しくなって。
でもものすごく幸せで温かい気持ちになって―――」

そこまで口にして、不意に頭の中に幼馴染の姿が浮かんだ。


ずっと傍にいて、一緒にいると楽しくて、安心できて―――。


「どうしたの?」

フランが私に問いかける。

「ううん、なんでもない」

私はフランに笑い返して見せた。

「やっぱり、まだ私には良くわからないかも」



大切な人、だけれど、それが恋と呼べるものなのかは私にはまだわからない。


でもいつか、私が恋をする時、その相手があの幼馴染だったらいいなとそう思ったのは、フランにはまだ内緒にしておこう。