周りの人にうんざりするぐらい気を使うくせに、自分のことにはまったく無頓着なあなた。
だから、私の気持ちになんて気づいていないと思っていた。
それなのに。
「ええっと、ごめんバッシュ。今のって……」
「キス、だな」
必死に平静を保とうと努力している私に、目の前のバッシュはひょうひょうとそう答えてみせた。
「う、うん、そうだよね。……でも、なんで?」
おそるおそるバッシュの顔を見上げれば、相変わらずまっすぐな瞳が向けられていた。
「―――それは、私も君のことが好きだからだ」
悲しい時だけじゃなくて、嬉しい時も涙が出るってこと初めて知った。
「もう1回。もう1回聞かせて?」
「もちろんだ」
「好きだ」の言葉と一緒にくれた2度目の甘いキス、私は一生忘れないと思う。