「もう、知らない」
そう言って背を向ければ、バルフレアが肩をすくめたような気配がした。
「いい加減機嫌直せ。彼女とは何もない。あるわけないだろう?」
「夜更けまで一緒に飲んで、部屋にまで行ったのに?」
「酔いつぶれた女を残していけないだろう。それに、あの夜は将軍もフランも一緒だった」
「……ホントに?」
「ああ、この空に誓って」
心の中でほっと安堵のため息をこぼしたけれど、なんだかそれで終わらせるのも悔しい。
こんなに私を不安にさせたんだもの。
少しくらい、わがまま言ってもいいよね?
「じゃあ、キスしてくれたら許してあげる」
勇気を出してそう言えば、バルフレアはにやりと笑ってみせた。
「お安い御用だ」
触れるだけのキスも、啄ばむようなキスも、まだ少し慣れない深いキスも。
バルフレアがくれると、全部甘い宝物になって私の心に積み重なっていく。
「気が済んだか?」
「……まだ、足りない」
不敵に笑ったバルフレアに、今度は私からキスしてあげる。