ああ、どうしよう。

私は心の中で溜息をついた。今の状況は、かなりまずいような気がする。背には壁。そして、目の前には―――。

「考え事か?随分余裕だな」

にやりと笑った黒髪の男。

「いえ、そういうわけじゃ……」
「ほう」

苦笑いをする私に、男は口端を上げて再び笑う。

「ええっと、いつまでこの体勢でいればいいんでしょうか……」
「おまえがちゃんと答えるまでだ」

おずおずと問いかければ、強気な返答。

「……あの私、平々凡々な一般市民なんです」
「わかってる」
「仕事だってバリバリこなしてるわけじゃないし、ただのしがない道具屋の店員なんです」
「わかってる。だが、しがない、っていうのは酷い言い草だな」
「だ、だからその……アズラス将軍とその…」

その先を言う前に、バン、と私の顔の横にアズラス将軍の手が置かれ、ますます逃げ場のない状態になってしまった。

「そんなのは関係ない。なんのために俺が、軍から無償で支給される回復アイテムを買いに行っていると思っている?なんのために、あんなさえない店に毎日通っていると思っているんだ?」

将軍、『さえない店』も結構酷いと思います。ミゲロさんが聞いたら泣いちゃいます。

心の中で密かにに抗議しているうちに、いつの間にやら目の前にはさらに近づいたアズラス将軍の顔。


「気づかなかったとは言わせねぇ」


陥落してしまうのも、時間の問題みたいです。





title from 『確かに恋だった』より「偉そうな彼のセリフ」