「それで?」

立ったまま腕を組み、淡々とした口調で私に問いかける……もとい、尋問するバッシュ。私はベッドに座り、その尋問にしどろもどろ答えていた。

「最近、武器とか新しいの買っちゃって、お金が足りなくなってきたじゃない?」
「ああ、そうだな」
「だから、これはどこからか調達しなきゃ!と思って」
「ほう」
「それで、手っ取り早いのが……」
「モブ討伐だった、というわけか」

「そうなの!」と賛同の声を上げようとしたけれど、バッシュにじろりと睨まれて開きかけた口を閉じた。


私が討伐に行ったのは西ダルマスカ砂漠のテクスタ。レベルも低いし、ちょうどみんな忙しそうだったから、ひとりで大丈夫だと思った。だけど、運悪く砂嵐が吹き始め、てこずっている間に次々とウルフを呼ばれてしまった。なんとか討伐には成功したけれど、体中傷だらけ。ケアルで治そうとしたところに、なぜか突然バッシュが現われたのだ。酷く怒った表情を浮かべ、無言のまま私の傷の手当をした後、そのままラバナスタのこの宿屋まで連行されてしまい、今この状況。

「ひとりで勝手な行動は取らないと言ったはずではなかったか?」
「……はい、言いました」
「確か、無茶な真似もしないと言っていなかったか?」
「……はい、その通りです」

いつも優しいバッシュが、ホントに怒っている。どれだけ心配をかけてしまったのが改めて身に染みて、申し訳ない思いでいっぱいになった。

「あの、バッシュ。本当にごめんなさ……」

『ごめんなさい』と言い切る前に、私の視界は反転した。

「あ、あのバッシュ???」

状況がイマイチ飲み込めず、ベッドに倒れこんだまま私を見下ろすバッシュを見上げた。

「約束を守れなかったら、私も好きにさせてもらうと言ったはずだ」
「い、言ったけど、それはバッシュも単独行動したりとか……」
「私はそんなバカな真似はしない」
「ば、バカって……ひゃっ!」

首筋に降りてきた唇と柔らかな顎鬚の感触に、思わず変な声が出てしまった。

「ちょ、バッシュ!」

 慌てて身を捩ったけれど、バッシュの力に叶うわけもなくて。

「君が心配をかけるからだ」
「だっ、だからごめんなさいって……!」


「すまないな、約束は約束だ」

その時のバッシュの意地の悪い顔、一生忘れてやらないんだから!





title from 『確かに恋だった』より「偉そうな彼のセリフ」