バルフレアとは、ただの飲み仲間だった。バルフレアがここビュエルバに立ち寄った時に、時間が合えば一緒に飲む。ただ、それだけの関係。

バルフレアは驚くほどもてる。最速の空賊としてその世界じゃかなり有名だし、加えてあの整った顔立ち。おまけに、女性の扱いが憎らしいくらいにうまい。言い寄ってくる子が後を絶たないのも頷ける。

だけど、私は―――


「……ねえ、ちょっと説明してほしいんだけど」

私はベッドに押し倒された状態で、私の上に跨っているバルフレアに問いかけた。

「何を聞きたいんだ?」

『何か不満でも?』と言いたげな顔でバルフレアは答える。

「全部よ、全部。なんで私の部屋に来たのかとか、どうしてこうしてるのか」

本当は間近にあるバルフレアの顔に心臓がうるさいくらいに音を立てていたけれど、出来る限り平静を装った声色で再度問いかけた。

バルフレアは肩眉を吊り上げて、小さく溜息をつく。

「残念だな。伝わってないとは」
「何が?」
「俺がおまえを好きだってことさ」

……好き?私を?バルフレアが?

「こっちは露骨にアプローチしてきたつもりだったのに、一向におまえがなびく気配がないから実力行使に出てみたってわけだ」

呆然としている私に、バルフレアはにやりと笑ったまま続けた。

「それに、おまえも同じ気持ちだと思ってたんだがな」
「……っ」


ホントは、ずっとバルフレアが好きだった。だけど私なんかがバルフレアに釣り合うわけがない。だったら、せめて友達というポジションで隣にいれたら良かった。

「そ、そんなこと何人の女の子に言ってきたのよっ……騙されないんだからっ」
「やれやれ随分な言いがかりだな」
「……たくさんの女の子のうちのひとりだなんてやだっ……」

そう言うと、バルフレアはそっと私の頬に手を添えた。

「……泣くな」

言われて、私は自分が泣いていることに気づいた。バルフレアが親指で私の涙を拭う。

「お前の事が好きだって気づいてからは、誰ともこんなことしてない。想っているのはお前の事だけだ。それに―――」

コツンと、バルフレアは額を私の額に合わせた。

「好きになったのは、俺の方が先だ」

重なった唇をゆっくりと離すと、バルフレアは私の目を覗き込んで言った。


「文句があるなら聞いてやるぜ?」


やっぱり私、あなたが好きです。





title from 『確かに恋だった』より「偉そうな彼のセリフ」